改憲勢力「3分の2」に意味はあるのか?

 ここ最近の選挙では、改憲勢力が「3分の2」以上の議席を得たかどうかに注目が集まります。今回の参院選でも、与党が「過半数」の議席を獲得したことよりも、「3分の2」に達しなかったことが殊更に強調されています。

 しかし、「3分の2」を問題とすることにあまり意味はないでしょう。そもそも改憲の中身を見なければ、改憲に賛成か反対かの態度を決めることはできないはずです。

 さらにいえば、そもそも「3分の2」という数字にも、意味があるわけではありません。改憲案の国会発議に3分の2以上の国会議員の賛成が必要とされているのは、憲法改正がその時々の与党・多数派だけではなく、野党や少数派からの賛同も得て実現するのが望ましいからです。「3分の2」という数字に憲法理論上の根拠はありません。「3分の2」ではなく、他国に見られる「5分の3」や「55%」という数字ではなぜダメなのかを理論的に説明することは不可能です。むしろ日本国憲法が施行から70年以上一度も改正されていないという事実からは、「3分の2」という初期設定が非現実的なものだったというのが素直な捉え方です。

 「3分の2」を問題とする思考は、「3分の1」以上を確保した野党・少数派は「改憲を阻止できる」という考えと裏腹です。事実、今回の参院選の結果を受けて、「改憲困難」という評価をしているメディアもありました。

 しかし、「3分の1」の反対で改憲が阻止できるということは、少数派に「拒否権」を認めることです。憲法改正は最終的には国民投票で決められるので、国会少数派の拒否権行使は、主権者である国民に意思を問うことじたいを阻止するもので、「国民主権」という憲法原理と緊張関係にあります。3分の1確保(3分の2阻止)だけを選挙の目標とし、拒否権行使をちらつかせるような態度は、憲法を尊重するものとは言えないでしょう。

 制度論としては、国会での過半数の賛成で改憲案を発議して、国民投票で決するというのが合理的な改憲手続であるように思います。